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便をいじってしまう(弄便)

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事例キーワード

  • オムツに手を入れ、自分が排泄した便を素手でいじってしまう
  • 便器の中に手を入れて汚物をかき混ぜる
  • 便をいじって丸めたりする
  • 壁や衣類など周囲になすりつける
  • 便のついた手を口に入れてしまう
これらの行為を「弄弁(ろうべん)」と言います。 「便をもてあそぶ」と書きますが、ご本人は決してもてあそんでいるわけではなく理由があります。


弄便が起こる理由

ほとんどの場合、排便の課題が要因となっています。 高齢になると腸の機能が低下し便秘がちになります。そうなると下剤を服用することになり今度は下痢気味になります。 こうして次第にオムツを使うことが増え、そこに認知障害が加わることが弄便の引き金になります。

①「自分で何とかしよう!」とする気持ち
 ・トイレの場所がわからない
   トイレにたどり着く前に失禁してしまい、羞恥心などにより自分で処理しようとした
 ・トイレの流し方や排せつ後の手の洗い方がわからない
   自分なりに処理をしようとして便器の中に直接手を入れてかき混ぜてしまう
 ・失禁したことを訴えることができない
   自分なりに後始末しようとして衣服になすりつけてしまう
 ・便を認識できない
   便をほかのものと誤認して触れてしまう

②不快感を取り除きたい
 ・排便した意識や記憶がなく、「異物が入っている」と感じそれを取り除こうとした
 ・オムツの中が蒸れる不快感によりオムツを脱ぐが、便を認識できず触ってしまう
 ・便が長く皮膚に接触していることでかゆみや痛みを生じ、おしりを触ったときに
  便が手指についてしまう。

弄便の予防策

☑ 自然な排便を促す
 ◆便が長時間オムツにあることを減らす
  ご本人の排便リズムや排便前の行動を把握し、できる限りトイレにお連れしましょう。

 ◆普段から消化に良い食品や十分な水分補給を心がける
  ご本人の昔からの「なじみの便秘対策」を行うことも精神的な安定にもつながります。

 ◆ストレッチやマッサージ、日中の活動量をアップする
  腸の働きを活性化させ、下剤に頼らないようにしましょう。

☑ 不快感をなくす

 ◆こまめにオムツ交換をする
  トイレでの排便が難しい場合でも排泄リズムや排便前のサインを把握し、
  不快感を感じる前に新しいオムツに交換しましょう。

 ◆肛門やお尻、手指の皮膚を保護する
  ワセリンや肌に合うクリームなどで皮膚を保護しておくことでかゆみや痛みを生じにくくさせます。
  また、含まれている油分が便をはじき、ふき取りやすくなります。


☑ 処理しやすい環境づくり

 ◆周囲を便汚れから保護する
  「ベッドの周りに防水シートを敷いておく」「壁にはがせるビニル製のシートを貼っておく」など
  汚れてしまう部分を最小限に抑えるための環境も整えましょう。

弄便があった時の対応

☑ ご本人のお困りごとに共感し、不快感を取り除く
 注意したり責めたりせず、ご本人が困ってどうにか対応しようとしたことに共感し、
 手や体をきれいにしてさしあげましょう。
 認知機能の低下によりなぜ怒られているのかが理解できません。また言われた言葉は忘れてしまっても
 その時の感情は残るため、介護を拒否するなど今後の介護生活に支障が出る可能性があります。  

  

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ケアのヒント

弄便は認知症の行動・心理症状の一つとされています。しかし、たとえ症状だとわかっていても、排泄物を触っているご本人の姿を見たご家族のショックは大変なものです。

訪問介護サービスをご利用のお客様にご自分の便を丸めて、机に並べている方がいらっしゃいました。娘様は四六時中処理に追われ疲れ切っておられました。 ご本人に理由を尋ねると「自分の世話をしてくれている娘に、娘が大好きなおはぎ作ってお礼するの」と笑顔でお話されました。

弄便がなぜ起こるのかを知り、よりご本人の気持ちを理解することが、ご家族自身のショックを和らげる一助になるかもしれません。

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